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対話から生まれた 創生宇宙論 V7

雲の記憶 - 内気と勝気が紡ぐ物理の詩

対話から生まれた 創生宇宙論:V7(PDF版)

創生的まなざし、再び

あらゆる現象を「情報」のプロセスとして捉え、そこに「内気(安定)」と「勝ち気(創造)」という宇宙的な呼吸を聞き取る。それが本書の視点「創生的まなざし」です。このアプリケーションは、そのまなざしを用いて、宇宙の詩をインタラクティブに読み解く試みです。

第1章: 雲は語る - 宇宙の自己相似構造

この宇宙論の中心的な比喩「雲」。それは宇宙の始まり、最小の素粒子、そしてブラックホールという異なるスケールで、同じ構造(フラクタル)として現れます。これは「情報密度が時空の構造を決定する」という根源的な原理を示しています。

巨大な雲
宇宙の始まり
(情報の雲)
戻ってきた雲
ブラックホール
(局所的な雲)
小さな雲
素粒子
(凍結した雲)

巨大な雲 (宇宙の始まり): 時間さえも凍てついた宇宙サイズの「情報の雲」。ビッグバンとは、この雲が「勝ち気」な呼吸を開始し、晴れ渡っていくプロセスです。

第2章: 雲は戻る - ブラックホールという創生の反転

ブラックホール(BH)は天体の残骸ではなく、宇宙が始まりの「雲」の状態を局所的に再現する場所です。それは宇宙の記憶を守る「内気」の姿であると同時に、次の創生を準備する「勝ち気」の種でもあります。

内気: 情報の凝縮

BHは、物質、エネルギー、過去の記録(情報)を事象の地平面の内側へ集め、圧縮します。情報を失われない形で守る、究極の「内気君」の姿です。

勝ち気: 創造の種

BHは墓場ではありません。内部では、次の宇宙や新しい銀河を生み出すエネルギーと情報が、解放の瞬間を待っています。再生のために眠る「勝ち気君」の種です。

情報の凝縮 (内気) 創造の種 (勝ち気)

BHは『創生の書』の円環を閉じる、究極のループ機構です。

第3章: 加速する宇宙 - 内部からの呼吸

宇宙の加速膨張、いわゆる「ダークエネルギー」の謎。その答えは宇宙の外ではなく、内側にあります。それは、宇宙が無数のブラックホールというエンジンを使って、自らを内側から膨らませている「呼吸」そのものです。

空間生成圧 (Space-Creation Pressure, SCP)

BHが内部に蓄積した情報を解放し、新しい宇宙(銀河)の種となる「ミニビッグバン」。これは既存の時空に、新しい空間そのものを「創り出す」プロセスであり、内側から外側へ向かう有効な「圧力」を生み出します。

宇宙全体の加速膨張とは、無数のBHが宇宙の至る所でこのプロセスを繰り返し、その局所的な空間生成が統計的な平均として、宇宙全体を押し広げている現象だと考えられます。

第4章: 生命の起源 - 狭間の火花

生命はどこで生まれたのか。安定し情報が希薄な広大な海(内気)ではなく、エネルギーが流れ込み、変化が激しい「狭間」(勝ち気)でした。生命はゼロからではなく、鉱物の「知恵」を再発明することで誕生したのです。

内気: 安定の海 / 膜の獲得

広大な海は安定していましたが、情報が希薄でした。生命が「個体」となるためには、自己複製能力(RNA)を保護し、内部環境を安定させる「膜」の獲得、すなわち「内気」の力が必要でした。

勝ち気: 狭間の火花 / RNAワールド

生命の火花は、火山性温泉や熱水噴出孔といった、エネルギーが流れ込み変化が激しい「狭間」でこそ散りました。自己複製能力を持つRNAの誕生は、情報を動的にコピーする「勝ち気」の発明でした。

鉱物の知恵と「再発明」

生命は、粘土鉱物が持つ「結晶構造(背骨)に情報を記録する」という先輩の知恵を学び、それを炭素という素材で「再発明」しました。生命は、宇宙の第一原理(情報整合性の自己保存)を実現する、生きた「筆記者」なのです。

第5章: 意識の宇宙 - 眠りのブラックホール

生命はやがて「意識」を生み出します。その最も身近な謎である「眠り」とは、意識が情報を再編・再生するためのミクロな「ブラックホールサイクル」です。

意識の「BHサイクル」

  • 眠り (内気モード): 覚醒時(勝ち気)に得た膨大な情報を、ノイズを遮断して保護・再編する「意識のBH状態」。情報が絶対的に保護されます。
  • 夢 (降着円盤): 再編の過程でこぼれた情報のかけらが、意識の表層で輝く「残像」。BHの「降着円盤」に相当します。
  • 目覚め (勝ち気モード): 再圧縮された情報が、新しい一日に向けて一気に「解凍・展開」される、脳内の「ミニミニビッグバン」です。

「眠る」生物には、そのレベルに応じた「意識」が存在します。鉱物にもまた、私たちが観測できない時間軸で情報を処理し自己を維持する「意識」があるのかもしれません。